「獅子が我が子を千尋の谷へ落とす」お話。
歌舞伎といえば思い浮かぶ言わずと知れた有名な演目です。
百獣の王である獅子と百花の王である牡丹、
そして牡丹に引き寄せられる蝶々とその蝶々に引き寄せられる獅子。
切っても切り離せない関係性が絵になる美しさを生み出しています。
獅子の精霊が(和楽器の音色で表現される)美しい渓谷で戯れる。
獅子の親子愛を感じる舞があり、狂言(笑い)もあり、圧巻の毛振があり、
歌舞伎の素晴らしさが詰まった演目です。
私が歌舞伎を好きになったのは
十八代目中村勘三郎さんの歌舞伎を観たときに
『歌舞伎ってこんなに面白いんだ!』と思いハマったきっかけです。
『必ずまた勘三郎さんの歌舞伎を観に行く!』と決めたのに、
まさかわずかその数ヶ月後に彼岸へ旅立ってしまわれるとは。
『納得いかない!こんなに好きにさせておいて?!』
『もっと彼の歌帳舞伎を観てみたかった』という思いが今でも込み上げてきます。
そして、この連獅子を観るといつも思うのが
『親子三代で毛振をしたかっただろうな』ということ。
襲名されたお孫さんと舞台に立つ勘三郎さんを観てみたかったです。
現代の人が観ても楽しい歌舞伎を、常に新しい挑戦を、
そんな勘三郎さんの意志が残る中村屋さんを箱推ししています。
別枠で四代目猿之助さんと八代目染五郎さんも好きなんですけどね。
コロナの影響で色々と大変な中、
観劇していてショックだったのが掛け声がなくなってしまったことです。
発声による感染リスクを考えれば当然なのですが、
私のような俄ファンにも登場シーンや見せ場を教えてくれるし、
演出としても掛け声があった方が役者さんが輝くし、
歌舞伎にとって大切なものなのだと改めて実感しました。
心なしか歌舞伎役者さんも元気がないように観えてしまいます。
大向うさんがいなくなったら困るので、
早く掛け声が復活しても良い時代が来ることを祈ります。
最後にYouTubeにて『平成中村座チャンネル』を開設してくださったこと、関係者様に感謝です。
勘三郎さん好きには魅力が詰まりすぎていて、本当にありがたいです。